2014年2月4日火曜日

ニセコ日記・その6[スニーキー・shikky]



                                                                                                Ainu Dance Feb. 2014




Shikkyは、 細く長い黒髪に、アンニュイな雰囲気を漂わす、中華系とベトナム系のハーフのオージー23才。


同じコンドで働く同僚だ。



顔が特別可愛い訳ではないが、若くてアンニュイな雰囲気が受けて、男性スタッフの間で人気沸騰中。


ハウスメートのハニーと同様、どこのパーティ会場にも顔を出し、人気を二分する、ライバル関係にある
という話を聞いた事がある。




さて、そのShikky。


プライベートではともかく、仕事場では随分な困ったちゃん。



まずは、出勤時間。


毎回遅れて来るのはお約束で、ドアを通過するのはだいたい5分すぎ。


それから着替えて、髪を整え、実際に現場に入るのはだいたい20分すぎ。


そんな彼女を見て、オーストラリア人マネージャーの まさお(日本名)は覚えたての日本語で愚痴を言う。

「かのじょは、まいにちちこく。こまりますねー。」



しかし、モナリザ的微笑を称えて現場に入る彼女を前に、ヤワなまさおが、文句を言えるはずがない。

「ハァイ、Shikky!ハウズゴーィン?昨日の雪はどうだった〜?」

二重人格なまさおの後ろ頭を、心の中では叩きながらも、大人な私は、まさおの背後に立ち、後ろから
睨むだけとする。




さ、仕事仕事!

Shikkyと入れ替わりにまさおがオフィスに戻ったので、気を引き締めて取りかかる。


仕事場では、整理整頓が基本。

まずは、 狭いフロント内を隅々まで、掃除機で掛けて回る。

その間、低血圧(に違いない)なShikkyは、お目覚めのティーと、お気に入りのポッキーを片手に、
メールに向かい、まったりタイム。

寝起きで不機嫌そうな彼女に、決して気軽に話しかけたりしてはいけない。

そっとしておいて、こちらは続いてモップがけ。


雪国のコンドミニアムは、靴底の雪で、 床が水浸しになりやすい。

特にロッカールームは、気を抜くと、すぐに湖状態となってしまうので、体育館を拭くなみの特大モップで、
腰をいれて取りかかるが、これが、ちょっとしたひと運動。




約20分間、地下の水たまりと格闘し、すっきり壮快となったフロアを後にフロントに戻れば、朝のお食事を

済ませた彼女は、貢ぎ物を手に訪問する若いドライバーと楽しく歓談中。


一瞬むっとするもスルーして、今度は引き継ぎノートをチェックする。



あるある!たくさんの引き継ぎが。昨晩もさぞがし忙しかったに違いない。



殴り書きのメモを一つ一つ解読しながら、いくつかの電話を掛け、ふと顔をあげると、今度は隣で、スマート

フォンを片手に、マイワールドなShikky。




若さとは、時として無知である。


いちいちムキになっていたのでは、やりきれない。



人は人と割り切って、メールと格闘する・・と、システムの使い方が分からないので、初めて声を掛けてみる。




“ね、ここの入力の仕方なんだけどさ。”



“マニュアルに書いてあるわよ。”(←目はスマホ)



“ってか、ここなんだけどさ・・”



“マニュアルに書いてあるわよ。英語、読めないの?” (←目はスマホ)



ムッキ〜ッ〜!!!




性悪女とは、こういう女のことを言うのである。




ほんの数年前だったら、間髪置かずに、タックルしていたであろうが、最近の私は、瞑想など齧って、

小さなことでは揺るがないのである。


はいはい、話しかけてもらいたくないのね。



面倒なことが嫌いであることは、すでに人伝に聞いているし、彼女が二日酔いであることも、先ほどの

ドライバーとの会話で学習済みだ。


それからしばらくは、沈黙の時が流れ、あわや、このまま休憩時間に差し掛かるかと思ったその瞬間・・




トゥルルル(電話音)




“グッモーニング xxコンドミニアム。ディス イズ Shikky スピーキング。ハゥメィアィヘルプユゥ?”


まるで小鳥のように、爽やかな声で電話を取るshikky。



感じが良いなんてものじゃない。



電話が終わると、続いて、オーストラリア人軍団登場。


“ハローィ、ミスター△△。ハゥアゥユゥ?”



またしてもにっこりと笑みを浮かべるShikky。



さっき、まさおに浮かべた微笑みの、10倍ボーナスサービス版ときた!




すっかりご機嫌で去って行く、赤ら顔の白人軍団。


そう。この職場は、二重人格揃いな、悪魔の集団なのであった・・





(続く)






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